課題
- 社内の問い合わせ窓口が総務・人事・経理など部署ごとに分散しており、従業員が適切な相談先を把握しづらい状況だった。
- 社内 Wiki に記載済みの定型的な質問にもバックオフィス担当者が個別対応しており、月間約400件の問い合わせ対応がコア業務を圧迫していた。
- 夜間や休日には問い合わせへの即時対応が難しく、質問者が必要な情報をタイムリーに得られなかった。
対応と結果
- AI が回答できない場合にも、質問内容に応じて適切な問い合わせ窓口へ自動で誘導する導線を設計し、「誰に聞けばいいか分からない」状態を解消。
- 社内 Wiki の情報を自然言語で検索・回答する AI チャットボットを Slack 上に開発し、定型的な問い合わせへの個別対応を自動化。
- AI が24時間即時に一次回答を提供できる仕組みとし、夜間・休日でも従業員が必要な情報を得られる環境を実現。
- テキスト回答に加え、内容を画像で要約して提示する機能を実装し、業務の合間でも一目で要旨を把握できる UX を実現。
- 1件あたり約5分の対応時間削減により、月間で約2,000分(人件費ベースで約4万円相当)の効率化を見込む。
KDDIアイレットは、社内コーポレート部門における問い合わせ業務の効率化を目的に、Slack 上で動作する AI チャットボットの開発に取り組みました。
Google Cloud の Agent Development Kit(ADK)と、最新のコンテキスト接続規格である Model Context Protocol(MCP)を組み合わせ、社内 Wiki の情報を自然言語で検索・回答できる RAG システムを構築。問い合わせ対応の自動化と窓口の一元化を実現しました。
※RAG:Retrieval-Augmented Generation の略。日本語では検索拡張生成と訳されています。RAG を使用することで、生成 AI が事前に学習させた社内のデータなどから回答をすることが可能になります。
問い合わせの分散と定型対応の負荷。バックオフィス業務の効率化に向けた社内 DX の取り組み
KDDIアイレットの社内では、従業員からコーポレート部門への問い合わせが月間約400件発生しています。総務・人事・経理・法務など窓口が部署ごとに分かれており、従業員にとって「誰に・どこで」質問すればよいかが分かりづらい状態でした。加えて、社内 Wiki に記載済みの内容であっても個別に問い合わせが寄せられるケースが多く、バックオフィス担当者は本来注力すべきコア業務の時間を確保しにくい状況にありました。
こうした課題を解決するため、社内コミュニケーション基盤である Slack 上で動作する AI チャットボットを開発。利用者から見た操作感は通常のチャットボットと同様ですが、その内部では質問内容に応じて「文書の中身から意味を読み取る検索」と「ファイル名や構造から探す検索」を AI が自ら判断して使い分け、それでも回答できない場合には適切な窓口を案内する AI エージェントが動作しています。Google Cloud のマネージドサービスと最新のエージェント技術を組み合わせ、問い合わせ対応の自動化と窓口の一元化に取り組みました。
ADK と 公式 Backlog MCP によるハイブリッド検索。最新プロトコルを活用した AI エージェント構成
本システムは、Google Cloud 上に構築した AI エージェントが、Slack を通じて従業員の質問を受け付け、社内 Wiki(Backlog)から関連情報を検索・回答する仕組みです。エージェントの構築には、Google Cloud の Agent Development Kit(ADK)を採用しています。
情報検索には、ADK の組み込みツールである Agent Search と、公式提供の Backlog MCP を併用したハイブリッド構成としました。Agent Search がドキュメント内容を理解するセマンティック検索を担い、Backlog MCP がファイル名やプロジェクト構造に基づく検索を補完することで、非構造化データに対する検索精度を高めています。
また、Model Context Protocol(MCP)は、AI エージェントと外部ツールを接続するための標準規格です。本システムでは公式の Backlog MCP を採用することで、非公式実装に起因するアカウント情報漏洩リスクを回避しています。アプリケーションは Cloud Run 上で FastAPI として稼働し、Artifact Registry や Secret Manager と連携した構成としています。
ADK の制約を乗り越えた構成設計と、実務で効く UX の工夫
開発にあたっては、ADK 固有の制約に対するいくつかの技術的な工夫を行ないました。
ADK の仕様上、1つのエージェント内で組み込みツール(Agent Search)と自作ツール(Backlog MCP)を同時に扱うことができません。この制約に対し、Root エージェントに複数の役割を集約する構成へと変更し、組み込みツールと MCP ベースのツールを単一のエージェントフロー内で統合的に扱えるようにしました。
また、Backlog MCP を Cloud Run 上で起動する際、npx コマンド経由ではタイムアウトが発生する課題がありました。これに対して、Docker コンテナ内で事前に npm install を実行する構成とすることで起動時間を短縮し、安定稼働を実現しています。
なお、検索精度の面では、Backlog MCP の部分一致検索の仕様に起因する検索漏れへの対策として、資料が見つからなかった場合に実際に使用した検索ワードを明示し、別のキーワードでの再検索を促すガイドを組み込みました。回答の信頼性を担保するため、AI の回答には参照元の Wiki ページや PDF へのリンクを必ず提示する設計としています。
画像要約と「迷子にさせない」窓口誘導で自己解決の促進
UX の面では、テキストによる回答に加え、内容を画像で要約して提示する機能を実装しました。忙しい業務の合間にも一目で要旨を把握できるようにすることで、本システムの社内浸透率を高める工夫です。
仕組みとしては、AI エージェントに画像生成ツールである Nano Banana 2(Gemini 3.1 Flash Image) を組み込み、Backlog から取得した情報をもとに図解形式のサマリー画像を生成しています。
AI が回答できない質問や専門的な対応が必要な場合には、質問内容に応じて適切な窓口チャンネルへ自動で誘導する仕組みを設けました。単に「回答が見つかりませんでした」で終わらせるのではなく、次のアクションを具体的に提示することで、従業員が迷子にならない導線を実現しています。従業員は Slack 上で AI に質問し、必要に応じて同じチャンネル内で担当者にメンションを付けて詳細を確認するという運用フローです。DM ではなくチャンネル上でやり取りすることで、同じ質問への回答を他の従業員も参照できる状態としました。
本システムの導入により、バックオフィス担当者の問い合わせ対応にかかる時間の削減が見込まれています。1件あたり約5分の対応時間が削減された場合、月間で約2,000分(人件費ベースで約4万円相当)の効率化が期待されます。夜間・休日でも即時に一次回答が得られるようになったことで、従業員の利便性も向上しました。
今後は、Backlog 以外のデータソースの追加による検索対象の拡張や、Google Calendar との API 連携によるイベント情報の取得、よくある質問や回答不能だった質問の分析によるナレッジの継続的なアップデートなど、段階的な機能拡充を予定しています。社内業務の効率化に AI エージェントの活用を検討されている方は、ぜひお気軽に KDDIアイレットへご相談ください。
(使用プロダクト)
- ・Google Cloud
- Gemini Enterprise Agent Platform
- Cloud Run
- Cloud Storage
- Artifact Registry
- Secret Manager
- Agent Development Kit(ADK)
- ・FastAPI
- ・Backlog
Credit
クライアントKDDIアイレット株式会社