お客様の課題
- 全国の保守担当者から寄せられる太陽光発電・蓄電池システムに関する技術サポートや各種手続きの問い合わせ対応が逼迫し、業務効率化が急務となっていた。
- 内製化を目指してプロジェクトを進めていたものの、商用利用におけるハルシネーション制御や応答スピード、セキュリティ設定など、技術的な課題に直面していた。
- 複雑な社内規定(地域特例を含む経費規定など)や技術マニュアルに対応した RAG 検索精度の向上が必要だった。
対応と結果
- オープンソースの GenU を活用した内製化支援により、Amazon Bedrock と連携する社内専用 RAG チャットを構築。コストを抑えながら高機能な生成 AI 基盤を実現。
- ドキュメント構造の最適化(表形式からリスト形式への変更、特例ルールの明確化)により、RAG 検索精度を向上させ、ハルシネーションを大幅に低減。
- Amazon Cognito と AWS WAF を用いた認証・アクセス制限を実装し、セキュアな運用環境を構築。さらに、将来的な拡張を見据え、複数のナレッジベースに対応できるカスタマイズ方法を提供し、お客様自身での継続的な機能拡張を可能にした。
- 問い合わせ対応工数を7割削減。保守部門だけでなく設計部門にも利用が拡大し、社内の生成 AI 活用促進につながった。
株式会社サニックスエンジニアリング様は、全国の保守現場の担当者から寄せられる技術サポートや各種手続きに関する問い合わせ対応の効率化を目的に、生成 AI を活用した RAG チャットツールの導入を進めています。
本プロジェクトにおいて、社内ドキュメントをもとに必要な情報を即時に検索できる仕組みや、複雑な規定にも対応したナレッジ運用、セキュアな社内利用環境の整備など、その実現に向けた基盤構築と運用の内製化をアイレットが支援いたしました。
保守担当者からの問い合わせ対応の負荷を軽減すべく、AI チャット基盤構築と運用内製化に向けた技術的支援が必要に
株式会社サニックスエンジニアリング様(以下、サニックスエンジニアリング様)は、環境・エネルギー分野で事業を展開し、太陽光発電システムや蓄電池システムの設計・施工・保守を手がけています。同社では、全国に配置された保守担当者から、技術サポートや各種手続きに関する問い合わせが日々寄せられており、その対応が大きな業務負荷となっていました。
問い合わせ内容は、太陽光発電や蓄電池に関する技術的なトラブルシューティングから、地域ごとに異なる経費規定や特例ルールを含む社内規定の確認まで多岐にわたります。これらの情報は社内マニュアルや規定文書に記載されているものの、膨大な資料の中から必要な情報を探し出すには時間がかかり、回答までに相当な工数を要していました。
こうした課題を解決するため、サニックスエンジニアリング様は生成 AI を活用した RAG※チャットの構築を検討。当初は内製化を前提にプロジェクトを進めていましたが、商用利用におけるハルシネーション制御、応答スピードの最適化、セキュリティ設定など、技術的なハードルに直面し、アイレットにご相談いただきました。
※RAG:Retrieval-Augmented Generation の略。日本語では検索拡張生成と訳されています。RAG を使用することで、生成 AI が事前に学習させた社内のデータなどから回答をすることが可能になります。
GenU を活用した内製化支援で、コストを抑えた高機能 RAG チャットを実現
アイレットは、サニックスエンジニアリング様の「内製化」という方針を尊重しながら、技術的な課題を解決するパートナーとして支援を開始しました。
本プロジェクトでは、コスト効率と拡張性を両立させるため、AWS が公開するオープンソース「Generative AI Use Cases(以下、GenU)」を活用。GenU は、Amazon Bedrock と連携し、RAG チャットやドキュメント要約などの生成 AI 機能を短期間で構築できるフレームワークです。お客様からは「コストを抑えながら要望を実現できたのは GenU を活用した内製化だったから」との評価をいただきました。
プロジェクトを進めるにあたって技術的な課題の一つだったのが、RAG 検索の精度向上でした。サニックスエンジニアリング様の社内規定には地域ごとの特例ルールが多く、従来の PDF 資料では表形式で記載されており、生成 AI が正確に判断しづらい構造となっていました。そこでアイレットは、データソースのドキュメント構造そのものを最適化するというアプローチを提案。具体的には、表形式からリスト形式や JSON 形式への変更、特例ルールの明確な記述を行ない、RAG が正確に情報を取得できるよう改善しました。その結果、検索精度が大幅に向上し、ハルシネーションを効果的に低減することができました。
また、セキュリティ面では、Amazon Cognito と AWS WAF を組み合わせた多層防御を実装。Amazon Cognito による利用者認証と、AWS WAF による固定 IP アドレスからのアクセス制限により、社内の限られたユーザーのみがアクセスできる安全な環境を構築しました。加えて、RAG の参照データとして表示される URL についても、Amazon Cognito 認証ユーザーのみが Amazon S3 上の コンテンツにアクセスできる署名付き URL 発行機能を活用し、ユーザーが見やすい PDF 形式で情報を参照できるよう工夫しました。
内製化支援で自走可能な生成 AI 活用体制を確立し、継続的なアプリ改善とお客様の自律的な成長を実現
今回のプロジェクトでは、単なる技術提供にとどまらず、サニックスエンジニアリング様が自律的に運用・拡張できる基盤構築を重視しました。GenU はデフォルトでは単一のナレッジベースにのみ対応していますが、将来的に部門・用途ごとにナレッジデータを増やす可能性を見据え、画面パスに応じて複数のナレッジベースを切り替えられるカスタマイズ方法を提案。フロントエンド・バックエンド双方の改修方法を共有し、技術移転を行ないました。
また、GenU は頻繁にバージョンアップが行なわれます。Amazon Bedrock の機能更新に伴い、GenU のバックエンド処理が大きく変わることもあるため、カスタマイズ箇所がアップデートの影響を最小限に抑えられるよう設計。プロジェクト期間中にも、当初利用を予定していた Amazon Aurora のベクトル DB 機能に技術的な制約が判明しましたが、コスト・パフォーマンス・アップデート追従性を総合的に考慮し、Amazon OpenSearch Serverless と Bedrock Knowledge Bases を組み合わせた最適な構成を提案しています。
プロジェクトを通じてサニックスエンジニアリング様からは、
「課題や質問に対するキャッチボールがスムーズで、抱えている課題を素早く解決できた」
「アイレットの技術力だけでなく、コミュニケーション力・チーム力が素晴らしかった」
「フロントエンドエンジニアとバックエンドエンジニアの連携が見事だった」
と高い評価をいただきました。
プロジェクト完了後、サニックスエンジニアリング様は自社で GenU のアップデートやカスタマイズを継続的に実施されています。リアルタイム議事録作成機能の改善(多ページ出力から1ページ完結型への変更)や、LINE WORKS API と AWS Lambda を連携させた社内コミュニケーションツールへの組み込みなど、現場のニーズに合わせた機能拡張を内製で実現されました。また、当初は保守部門向けに構築されたシステムでしたが、高い検索精度と利便性が評価され、設計基準の調査にも利用されるようになり、現在では設計部門でも日常的に活用されています。今回の取り組みを受けて、社内では「生成 AI を積極的に活用していこう」という機運が高まり、全社的な生成 AI 活用促進にもつながっています。
アイレットは、お客様の「内製化」という目標に寄り添い、技術的な課題を一つひとつ丁寧に解決しながら、お客様自身が成長できる基盤を提供しました。生成 AI の導入を検討されている企業の皆様、特に内製化を目指しながらも技術的なハードルに直面されている方は、ぜひアイレットにご相談ください。お客様のビジネス目標に合わせた最適なソリューションと、継続的な成長を支える技術支援をご提供いたします。
(使用プロダクト)
- ・AWS WAF
- ・Amazon CloudFront
- ・Amazon S3
- ・Amazon API Gateway
- ・Amazon Cognito
- ・AWS Lambda
- ・Amazon DynamoDB
- ・Amazon Transcribe
- ・Amazon Kendra
- ・Amazon OpenSearch Service
- ・Amazon Bedrock Knowledge Bases
- ・Amazon Bedrock
- ・Agents for Amazon Bedrock
- ・Amazon SageMaker
- ・AWS Management Console
- ・Amazon CloudWatch
Credit
クライアント株式会社サニックスエンジニアリング