お客様の課題
- ガバメントクラウドの「共同利用方式(ネットワーク分離)」において、ASP 事業者のアカウント内にリソースが配置されているため、自治体側から詳細なリソース使用量やコスト構造が把握できなかった。
- 具体的な稼働データが参照できないため、現在のインスタンス選定が過剰スペックであるかどうかの妥当性判断が難しかった。
- 構成変更がシステムの安定稼働に影響を与えないよう、客観的なデータに基づいて関係者間で合意形成できるコスト最適化のスキームが求められていた。
対応と結果
- AWS マネージドサービスを活用し、共同利用方式内のリソース使用量を自治体側で可視化・分析できる仕組みを構築。
- Amazon QuickSight によるダッシュボード化により、直感的にリソースの余剰を確認できる仕組みを実現し、エビデンスに基づいた ASP 事業者への改善提案を実施。
- 取得した CPU・メモリ使用量等のデータをエビデンスとして、適切なインスタンスサイズへの変更を実施し、年間約12%のコスト削減を実現。
洲本市様は、地方自治体が共通して直面する「2025年度の基幹業務システム標準化」に向けた取り組みの一環として、政府が提供するガバメントクラウドへの移行を推進しています。しかし、ガバメントクラウドの「共同利用方式」では、複数の自治体がリソースを共有する構成上、自治体側から個別のインフラ稼働詳細が見えにくいという構造的な課題がありました。
本プロジェクトにおいて、アイレットは KDDI株式会社様と共に、ガバメントクラウドの運用管理補助者として、洲本市様、ASP 事業者様と協力し、共同利用方式内のリソース使用量を自治体側で可視化・分析できる仕組みの構築を包括的に支援させていただきました。
ガバメントクラウド移行後の「見えないコスト化」を打破。共同利用方式における透明性の確保と FinOps の実践
洲本市様は、兵庫県淡路島の南東部に位置し、豊かな自然と歴史的な街並みを併せ持つ自治体です。同市は、デジタル庁が推進するガバメントクラウドへの移行に取り組まれていますが、ガバメントクラウドは高度なセキュリティと最新のクラウドサービスを享受できる一方で、その運用形態の一つである「共同利用方式」には特有の運用上の難所が存在していました。
共同利用方式では、特定の ASP 事業者が提供するアプリケーション環境の中に、複数の自治体のデータやリソースが混在、あるいは分離された形で運用されます。この方式において、クラウドのリソース管理権限は原則として ASP 事業者に帰属するため、利用側の自治体からは「自組織のシステムが AWS 上でどの程度の CPU やメモリを消費しているのか」「現在のインスタンスサイズはワークロードに対して最適なのか」といった詳細な情報を直接参照することが困難でした。
デジタル庁のガイドラインでは、クラウド利用料の適正化を目指す「インスタンス最適化(ライトサイジング)」が推奨されていますが、洲本市様においても、実際の稼働実態が不明瞭なままでは、コスト削減に向けた具体的なアクションを起こすことができません。また、ASP 事業者様にとっても、システムの安定稼働を担保しながらダウンサイジングを実施するには、客観的なエビデンスに基づいた判断が不可欠でした。
こうした背景のもと、洲本市 DX推進課の多畑様より「エビデンスに基づいたコスト最適化」の実現をご相談いただきました。本プロジェクトで、洲本市様は、自らプロジェクトの全体提案を行なうことで、ASP 事業者様や運用管理補助者といった複雑に関係するステークホルダー間のオーケストレーションを主導されました。その結果として、インフラの透明性が確保され、三者(自治体・ASP 事業者・運用管理補助者)が共通のデータをもとに協力し合える体制を構築しています。
AWS マネージドサービスを活用したリソース管理基盤の構築。ダッシュボードによる直感的な可視化を実現
本プロジェクトでは、ASP 事業者様の環境から CloudWatch メトリクスを取得し、洲本市様が管理するネットワークアカウントへデータを連携する構成を採用しました。ASP 事業者様側では Amazon Kinesis Data Firehose を用いてメトリクスデータを Amazon S3 へ送信し、洲本市様側では AWS Glue によるデータ加工、Amazon Athena によるクエリ実行、Amazon QuickSight によるダッシュボード化を行なっています。
共同利用方式では複数の自治体のリソースが同一環境内に存在するため、特定の業務システムに関連するリソースのみを正確に抽出する必要がありました。そこで、AWS Lambda によるフィルタリング処理を実装し、インスタンス ID に基づいた抽出ロジックを組み込むことで、データの正確性を担保。また、標準の CloudWatch メトリクスに加え、エージェントによるメモリ使用量や拡張モニタリングによる Amazon RDS の詳細情報を組み合わせることで、精度の高い分析を可能にしました。
さらに、洲本市様が定義された役割分担にて、特定の関係者に負担が偏らない運用を実現。ASP 事業者様はデータ抽出を、アイレットはデータ加工・可視化の構築を担当することで、各者の強みを活かした効率的なプロジェクト推進が可能となりました。
ダッシュボードでは、Amazon EC2 の CPU 使用率やメモリ使用量、 Amazon RDS の詳細情報などを時系列で確認できます。また、Amazon QuickSight を採用したことで、自治体の担当者様でも直感的に操作できる UI を実現しています。
エビデンスに基づくインスタンス最適化を実施。Amazon EC2 利用料を年間約27%削減
可視化基盤の運用開始後、構築したダッシュボードを活用し、健康管理システムをホストする EC2 インスタンスの利用状況を分析。その結果、既存の m6i.xlarge インスタンスでは CPU 使用率が恒常的に低水準であることを確認した上で、より安価な t3 ファミリーのインスタンスへ変更を実施しています。
インスタンスタイプ変更後も、リソース使用状況に大きな変化が見られないことを Amazon QuickSight で確認し、システムの安定稼働を担保しながらコスト削減を実現しました。具体的には、Amazon EC2 費用は4,578.12(年間)→3,344.76(年間)へのコスト削減効果が得られています。
※Amazon QuickSight によるリソース使用状況の可視化イメージ
※インスタンスタイプを変更後、良好な状態で運用できていることを確認
本手法は、デジタル庁のガバメントクラウドガイドで示されている「インスタンス最適化」を具体的に実践したものです。共同利用方式であっても、適切なアーキテクチャを構築することでリソース使用量の可視化が可能となり、根拠に基づいたコスト最適化を実現できます。
アイレットは今後も、ガバメントクラウドの導入・運用に悩む自治体様に対し、現場の課題に寄り添った技術支援を提供してまいります。「共同利用方式」を選択されており、インフラのブラックボックス化を防ぎ、ガバメントクラウドにおけるコスト最適化を検討中の自治体様は、ぜひお気軽にご相談ください。
(使用プロダクト)
- ・AWS
- Amazon QuickSight
- Amazon EventBridge
- AWS Lambda
- Amazon S3
- AWS Glue
- Amazon Athena
- Amazon Kinesis Data Firehose
- Amazon CloudWatch
Credit
クライアント洲本市