課題
- 営業時間外(夜間・休日)にも迅速に問い合わせへ対応できる体制の強化が求められていた。
- 問い合わせ内容の高度化・多様化に伴い、オペレーターの習熟度やスキルに依存しない安定した回答品質の実現が課題となっていた。
- すべての問い合わせに対して人力で一次切り分けを行なっており、エンジニアの対応工数が増加していた。
- 顧客の不安や焦りといった温度感を早期に把握し、迅速な対応につなげる仕組みを強化したかった。
対応と結果
- 24時間365日の自動応答体制の確立により、営業時間外の問い合わせに対する即時回答を実現。
- 過去の問い合わせナレッジや技術ブログと AWS 公式ドキュメントを組み合わせた RAGの実装により、現場の知見を反映した精度の高い回答を提供。
- 処理内容に応じた Gemini モデル(Pro / Flash)の使い分けと推論処理の最適化により、Zendesk 特有の「30秒レスポンス制限」を遵守しつつ、高度な回答生成プロセスを確立。
- Datadog LLM Observability による感情分析の実装により、顧客の温度感を Slack へ即座に通知し、有人対応への能動的な介入を可能に。
アイレット株式会社が提供するクラウド導入・活用の総合支援サービス「cloudpack」における請求代行および監視・運用保守サービスでは、お客様からのテクニカルな問い合わせに対する一次回答の迅速化と、オペレーターの業務負荷軽減に取り組んでいます。
本プロジェクトにおいて、24/365の即時回答と、均一化された高品質なサポートを、お客様に提供する事と、自社のサポート業務改善を目的として AI チャットボットの開発と基盤構築を包括的に実施いたしました。
属人化の解消と 24/365 対応を目指して。サポートデスク業務における課題を生成 AI で解決
アイレット株式会社(以下、アイレット)では、請求代行サービスをご利用のお客様から月間約150〜160件の技術的な問い合わせを受け付けています。従来、これらの問い合わせにはエンジニアが人手で一次対応を行なっており、対応工数の増大が課題となっていました。また、営業時間(平日10時〜19時)を中心とした対応体制であったことから、夜間や休日の問い合わせにもよりスムーズに対応できる仕組みづくりが求められていました。さらに、問い合わせ内容の多様化に対応するため、オペレーターの経験値に依存しない安定した回答品質の実現を目指していました。
これらの課題を解決するため、サポートデスクの一次対応窓口として AI チャットボットを導入しました。本取り組みは、これまで段階的に進めてきた生成 AI 活用によるサポートデスク業務改善の一環として位置付けています。過去には、問い合わせ要約・検索機能の開発による約9人日の工数削減や、Ragas と LLM Observability を活用した回答精度判定の自動化・可視化を実現しており、今回の AI チャットボット導入はその次のフェーズにあたります。
関連事例
マルチモーダル対応と自社ナレッジ・AWS 公式ドキュメントの横断参照で高精度な回答を実現。深掘り機能を備えた AI チャットボットを構築
今回導入した AI チャットボットは、Zendesk の AI エージェント機能と Google Cloud の Vertex AI を組み合わせて構築しています。お客様が Zendesk 上のチャットから問い合わせを行なうと、AI が AWS 公式ドキュメント、オウンドメディア「iret.media」、過去の問い合わせ対応ナレッジを横断的に参照し、回答を生成します。過去5年分の対応履歴を参照範囲とすることで、情報の鮮度と網羅性のバランスを確保しています。
また、AI チャットボットの回答精度を高めるため、ユーザーの入力前に「カテゴリ選択」や「詳細入力フォーム(対象サービス・事象・期待値)」を挟むフローを設計しています。これにより、曖昧な問い合わせに対しても AI が正確に状況を把握し、適切な回答を導き出せる仕組みとなっています。さらに、最初の回答に対して「ドキュメントを詳しく解説して」「過去ナレッジの解決手順を詳しく」「具体的なコマンド/設定手順を知りたい」「解決しました」の4つの選択肢から深掘りできる「ディープダイブ・レスポンス」機能も搭載しました。テキストだけでなくエラー画面のスクリーンショットなどの画像も直接理解できるマルチモーダル対応も実現しています。
Zendesk の30秒制限を突破する Gemini モデルの最適化と、感情分析による能動的サポート体制の確立
Zendesk AI エージェントには、30秒以内にレスポンスを返す必要があるという仕様上の制約があります。高精度な検索と回答生成をこの制限内に収めるため、処理内容に応じて Gemini のモデル(Pro / Flash)を使い分け、推論トークン数や処理フローのチューニングを実施することで、回答の質と応答速度の両立を実現します。また、プロンプト設計においても、社内検索システムの開発で得た知見をベースに、状況に応じてシステムプロンプトを動的に切り替える仕組みを導入し、AI がその時々で最適な役割を担えるようにしています。
AI で解決できなかった場合は、Zendesk のチケット起票へ移行し、会話履歴をそのまま有人サポートへ引き継ぐ仕組みを構築しています。ユーザーは状況を再説明する必要がなく、エンジニアも AI が調査した前提情報を把握した状態で対応を開始できます。加えて、Datadog LLM Observability を活用した感情分析により、お客様の問い合わせ内容から温度感を検知し、Slack へ即座に通知する仕組みも構築しています。これにより、エンジニアが能動的にサポートへ介入できる体制を整えています。
本導入により、一次対応の自動化と24時間365日の即時応答が実現し、最低20%の工数を削減できると見込んでいます。AI が統一されたプロンプトに基づいて回答を生成するため、回答品質の均一化にも寄与しています。
AI チャットボットや生成 AI を活用したサポート業務の効率化に関心をお持ちの方は、ぜひアイレットへお気軽にご相談ください。
問い合わせ対応体制の改善比較
| 項目 | Before | After |
|---|---|---|
| 初報解答時間 | 営業時間のみ | 365日 24時間対応が可能に |
| 解答品質 | 担当者のスキル・習熟度に依存 | RAG 実装により、ナレッジに基づいた高精度な回答 |
| エンジニア工数 | 全件人力での一次切り分け | AI チャットボットによる一次切り分けの自動化 |
| 顧客状況の把握 | 温度感や緊急度の判断が困難 | 感情分析による可視化と迅速な有人連携 |
(使用プロダクト)
- ・Google Cloud
- Vertex AI (Gemini 2.5 Pro / Flash)
- Cloud Run
- Cloud Functions
- BigQuery
- ・Datadog LLM Observability
- ・Zendesk
- ・Slack
- ・LangChain
Credit
クライアントアイレット株式会社